マニュアルと手順書の違いとは　作り方のポイントを解説

業務の効率化や品質の向上において、マニュアル と 手順書 の役割は非常に重要です。どちらも業務を進めるためのガイドラインとして機能しますが、その内容や目的は異なります。マニュアルは、全体の基本方針や業務の流れを理解するための資料で、社員が一貫性を持って業務に取り組むための基礎となります。一方で手順書は、具体的な作業や操作を詳細に示すため、個別業務の実行を支援するために作られています。

例えば、マニュアルは「接客マナー」や「社内でのルール」などの包括的なガイドとして活用されることが多く、手順書は「レジ操作の手順」や「データ入力のフロー」など、特定の業務を細かく分解した具体的な手引きとなります。本記事では、このマニュアルと手順書の違いをさらに深く掘り下げ、それぞれの作成ポイントについて解説していきます。

マニュアルと手順書の違いとは

マニュアルとは何か

マニュアル は、業務の全体的なガイドライン としての役割を持つ文書です。これには、業務の目的や全体的な流れ、基本的なルールが記載され、新人や異動者がまず理解すべきポイントが網羅されています。

例えば、接客業のマニュアルであれば、「お客様への挨拶」「適切な服装」「注意すべきマナー」など、どのように振る舞えば良いかというガイドが示されます。新しい社員が入社したとき、まずこのマニュアルを見れば業務の全体像が理解でき、社内のルールや方針に沿った行動ができるようになるのです。

手順書とは何か

一方、手順書 は、業務を進めるための具体的な手順 を示すための文書です。目的は、特定の作業を正確に、漏れなく進めることができるようにすることです。

たとえば、レジ操作の手順書であれば、最初に「電源を入れる」「金額を入力する」「お釣りを渡す」といった詳細なステップが順を追って記載されています。手順書は「間違えずに作業を進めるための具体的なガイド」であり、複雑な操作やミスが許されない作業の際に役立ちます。

マニュアルと手順書の役割の違い

マニュアルは、業務の基本的な方針やルールを伝えることで、社員が一貫性を持って仕事を進めるためのガイドとなります。これにより、業務全体の流れや基本的な価値観を共有することができます。

一方で手順書は、具体的な作業の実行を支援するため、業務ごとの細かいプロセスが記載されています。このため、手順書があれば経験の浅い社員でも手順通りに作業を進めることができ、品質や安全性を確保することが可能になります。

マニュアルと手順書の目的

業務効率化のためのマニュアル

マニュアルは、新人や異動者が業務全体の流れを理解しやすくなるように基本ルール を示します。業務全体を把握できることで、新人の教育にかかる時間が短縮されるだけでなく、現場での戸惑いや質問が減少します。これにより、業務が円滑に進むようになり、会社全体の効率が向上します。

具体的な手順を示す手順書

手順書は、作業や操作を一つずつ順を追って進められるようにするために作成されます。これにより、従業員は手順書に従って確実に作業を進めることができるため、作業ミスが減り、作業の精度が向上します。特に、品質管理や安全性が求められる業務において手順書は重要です。

マニュアルと手順書が果たす役割

マニュアルと手順書は、それぞれ異なる役割を持ちながらも、業務の円滑化や品質向上において両方が不可欠です。組織全体が同じ方向を向いて効率的に業務を進められるよう、目的に合わせて適切に使い分けることが重要です。

マニュアル作成のポイント

読み手を意識した構成

マニュアル作成の際には、誰が読むのか を意識することが重要です。新入社員が読むのか、ベテラン社員が読むのか、もしくは異動したばかりの社員が対象なのかによって、内容の深さや説明のレベルが変わります。

重要な項目を漏れなく記載する

マニュアルには、業務を進める上で必須の事項や規則が網羅されていることが求められます。情報の網羅性 を確保することで、読者が迷わずに作業を進められるようになります。

5W1Hを活用した説明

マニュアルでは、5W1H を用いることで、誰が何をいつどこでなぜどうやって行うのかを明確にします。例えば、「どこで」「なぜ」などが不足していると、現場で迷いが生じる可能性があるため、わかりやすく説明することが大切です。

手順書作成の基本

流れを整理する方法

手順書の作成においては、まず作業全体の流れを整理 し、それを手順ごとに明確に分けて記載します。こうすることで、読む人が流れをつかみやすくなり、スムーズに作業を進められます。

シンプルで明確な表現

手順書は誰が見ても理解できるように、簡潔でわかりやすい表現を使うことが重要です。例えば、「レジの電源を入れてから『スタート』ボタンを押す」のように、明確な表現を心がけましょう。

業務に必要な情報の把握

手順書を作成する前に、その業務で必要な情報をすべて把握しておくことが大切です。これにより、読者が作業に必要な情報を手順書からすぐに見つけられるようになります。

マニュアルと手順書のテンプレート

使いやすいフォーマットの選定

マニュアルや手順書の使いやすさは、フォーマットの選定 に大きく依存します。フォーマットを選ぶ際には、現場で実際に使いやすいか、分かりやすいかが重要なポイントです。たとえば、頻繁に使うものはシンプルなレイアウトや項目ごとの見出しを採用し、情報を一目で把握できるようにすると良いでしょう。テンプレートは、作成者が工夫することで、読み手がストレスなく利用できる実用的なツールになります。

業務内容に応じたカスタマイズ

テンプレートは、業務内容に合わせてカスタマイズ することでより効果を発揮します。例えば、製造業の手順書では「品質管理」の項目を追加したり、接客業では「顧客対応」の項目を増やすなど、業務ごとに異なる要素を取り入れましょう。そうすることで、テンプレートが現場の状況に合った形となり、社員もすぐに活用できるようになります。

テンプレート作成のコツ

テンプレートは、シンプルで見やすい ことが大切です。情報量が多すぎると利用者が理解しづらくなり、逆に簡略化しすぎると肝心なポイントが抜け落ちてしまいます。適度な情報量と視覚的にわかりやすいデザインを心がけましょう。たとえば、重要な項目には色やアイコンを使うと、より直感的に理解されやすくなります。

マニュアル、手順書の作り方

STEPに基づいた制作手順

マニュアルや手順書を作成する際には、具体的なステップ に基づいて進めるとスムーズです。以下のような手順で進めると効率的です：

• 1. 必要な情報をリサーチし、必要項目をリストアップする
• 2. 読み手の立場で内容の構成を考える
• 3. 誰でも理解できる表現やわかりやすいデザインにする
• 4. 最後に他の担当者からフィードバックをもらい、内容を見直す

これらの手順に従うことで、内容が明確でわかりやすいマニュアルや手順書を作成することができます。

必要なツールの紹介 wordやexcelの活用

マニュアルや手順書の作成には、さまざまなツール を活用することで効率がアップします。例えば、文書作成ツール（WordやExcel）やデザインソフト（Canva、Adobe Illustrator）などが挙げられます。また、業務フロー図や表を作成するツールとしても便利です。これらのツールを使うことで、見やすくプロフェッショナルなマニュアルや手順書が簡単に作成できます。

作成者としての心構え

マニュアルや手順書を作成する者は、常に読み手にわかりやすく伝える ことを意識することが大切です。文章がわかりにくいと、実際に使用する人が混乱し、業務がスムーズに進まなくなる可能性があります。初心者の立場に立ち、難しい言葉を避け、具体例を入れて書くようにしましょう。

マニュアルと手順書の活用方法

社内教育での役立て方

マニュアルや手順書は、社内教育においても非常に役立ちます。特に新人教育の場で使用することで、業務内容の理解が早まり、即戦力として働けるようになります。社内教育時には、マニュアルや手順書を活用して教える ことで、教育担当者が直接説明する時間を短縮し、効率よく知識を伝えることが可能です。

定期的なアップデートの必要性

業務内容は常に変化しているため、マニュアルや手順書も定期的に見直すことが重要です。定期的なアップデート を行うことで、現場に即した内容を保ち続けることができます。特に、新しい技術やシステムが導入された場合は迅速に改訂しましょう。

情報共有の促進

マニュアルや手順書は、情報をチーム全体で共有するためのツール としても機能します。共有フォルダやクラウド上にアップロードすることで、誰でも簡単にアクセスでき、業務に必要な情報を手軽に参照できるようにしましょう。これにより、チーム全体での情報の共有が促進され、連携が強化されます。

業務マニュアルと手順書の種類

業務内容別の具体的例

業務内容によって、マニュアルや手順書の形式や内容が異なります。たとえば、飲食店のマニュアルでは「接客の流れ」や「食品衛生」の項目が重要になりますが、製造業では「生産ラインの手順」や「品質管理」が重視されます。業務内容に応じた具体例 を理解することで、それぞれの業務に適した資料を作成できるようになります。

デジタルとアナログの違い

マニュアルや手順書には、デジタル版と紙のアナログ版の両方があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。デジタル版は、更新が容易 でいつでも最新の情報にアクセスできますが、アナログ版は印刷したものを手元に置いて使用でき、簡単に確認が可能です。業務環境や利用者の好みに応じて最適な形式を選びましょう。

業種に応じた最適化

マニュアルや手順書は、業種に合わせた内容に最適化 することで、より実践的な資料となります。サービス業では、接客マナーや応対の手順が必要とされる一方、製造業では機械の操作方法や安全対策の手順が求められます。業種に応じて最適化することで、社員が効率的に業務を遂行できるようサポートします。

作成時の注意事項

担当者の意見を反映する

マニュアルや手順書を作成する際には、現場の担当者からフィードバックを得る ことが重要です。実際に業務を行う担当者の意見を反映させることで、使い勝手が良く、現場で役立つ資料が出来上がります。定期的な意見交換を行い、実用的な内容を目指しましょう。

専門用語の使用に注意

マニュアルや手順書では、専門用語の多用を避ける ことが求められます。専門用語が必要な場合は、わかりやすい解説を加えましょう。特に、新人や異動者にとって理解しやすい資料にするためには、できるだけ簡潔で平易な言葉を用いることが重要です。

業務フローとの連携

マニュアルや手順書は、実際の業務フローに沿った内容 にすることで、現場での利用が容易になります。業務フローを理解した上で作成し、手順が現場でスムーズに進むように心がけましょう。フローチャートや図解を取り入れることで、視覚的に流れを把握しやすくなります。

まとめ

マニュアルと手順書は、業務の効率化と品質の向上に欠かせないツールです。それぞれの違いと役割を正確に理解し、適切に使い分ける ことで、チーム全体が一貫した基準に基づいて業務を遂行できるようになります。効果的に運用するためには、作成時のポイントや現場のフィードバックを取り入れ、最新の情報に保つ努力が必要です。効率的で使いやすいマニュアルと手順書を活用し、業務のスムーズな遂行と組織全体の発展を目指しましょう。

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滝田 薫

株式会社アスナレッジ　代表取締役　中小企業診断士

中小企業の経営支援を中心に公的な業務も多く携わっており、特に人材教育、組織開発からの課題解決や職場環境の改善に力を入れている。現在はマニュアル制作サービス『トトノウ』の運営を行っており、マニュアルを通した業務改善に注力。アドバイスだけではなく、現場に入り込んだ支援を行い、経営者のよき理解者として伴走支援を行っている。